【フリーランスの家賃は経費】税務署に認められる家事按分の計算方法と割合を徹底解説!

フリーランスとして独立すると、支出の大部分を占めるのが家賃です。

「この家賃を経費にできたら、かなりの節税になるはず…」そう考えるのは当然のことでしょう。

しかし同時に「自宅の家賃を経費にするのはグレーゾーンなのでは?」という不安もよぎります。

「税務署に否認されたらどうしよう」と、経費計上に踏み切れない方も少なくありません。

この記事では、税務署に認められる家賃経費の考え方、具体的な計算方法、確定申告の手順までを網羅的に解説します。

正しい知識を身につけて、自信を持って確定申告に臨みましょう。

Contents

結論:フリーランスの家賃は経費にできる!ただし「家事按分」が必須

まず結論からお伝えします。

フリーランスは、自宅の家賃を経費として計上できます。

ただし、家賃の全額を経費にできるわけではありません。

経費にできるのは、あくまで「事業で使っている部分だけ」です。

この事業とプライベートの費用を分ける計算を、家事按分と言います。

この家事按分こそが、家賃を経費にするための最も重要なルールです。

税務署に説明できる合理的な根拠をもって按分することが、安心して経費を計上するための鍵です。

【図解】家賃を経費にする「家事按分」の具体的な計算方法2パターン

家事按分の計算方法は、主に2つのパターンがあります。

「面積」で分ける方法と、「時間」で分ける方法です。

どちらの方法を選ぶかは、あなたの働き方や住居の状況によって決まります。

それぞれの方法がどのようなケースに向いているかを理解した上で、自分に合った方法を選びましょう。

① 面積で按分|客観的で最も一般的な計算方法

自宅の中に明確な仕事部屋がある場合に適しているのが、面積で按分する方法です。

計算方法が客観的で分かりやすいため、最も一般的に用いられています。

計算式は非常にシンプルです。

家賃 × (事業で使っているスペースの面積 ÷ 自宅全体の面積) = 経費額

例えば、以下のようなケースで考えてみましょう。

項目内容
家賃20万円
自宅全体の面積80㎡
事業用の部屋の面積20㎡

この場合の計算は以下のようになります。

  • 事業利用割合:20㎡ ÷ 80㎡ = 25%
  • 経費にできる家賃:20万円 × 25% = 5万円

ワンルームマンションなどで明確な仕事部屋がない場合でも、この方法を適用できます。

部屋の一角にデスクと本棚を置き、そこを事業用スペースとしている場合、その部分の面積で計算します。

② 時間で按分|ワンルームなど仕事場の区別が難しい場合の計算方法

リビングの一部で仕事をするなど、仕事とプライベートの空間を面積で明確に区別するのが難しい場合は、時間で按分する方法を用います。

計算式は以下のとおりです。

家賃 × (1ヶ月の事業時間 ÷ 1ヶ月の総時間) = 経費額

ただし、この計算方法は事業時間が生活時間全体に比べて少なくなりがちです。

そのため、実務上は「1週間のうち、何時間仕事をしているか」という基準で計算することが多いです。

例えば、平日に1日8時間、週に5日間仕事をしているとします。

  • 1週間の総時間:24時間 × 7日 = 168時間
  • 1週間の事業時間:8時間 × 5日 = 40時間
  • 事業利用割合:40時間 ÷ 168時間 ≒ 24%

この割合を使って家賃を経費計上します。

この方法を使う場合は、客観的な根拠として日々の業務時間を記録しておくことが重要です。

【相場は何割?】家賃の経費割合、相場と税務署に説明できる根拠の作り方

「他の人は、家賃の何割くらいを経費にしているのか?」これは誰もが気になるポイントでしょう。

明確な基準はありませんが、一般的には事業利用の割合が30%〜50%程度のケースが多いようです 。

しかし、本当に重要なのは相場に合わせることではありません。

「なぜ、あなたはこの割合で経費を計算したのですか?」と税務署に問われた際に、論理的に説明できることです。

そのために、客観的な根拠となる資料を必ず準備・保管しておきましょう。

準備すべき根拠資料の例

賃貸借契約書

家賃の金額や物件の面積が記載されている基本の書類です。

物件の間取り図

事業用スペースをマーカーなどで色分けし、面積を書き込んでおくと非常に分かりやすい資料になります。

業務日誌やタイムトラッキングの記録

時間按分を用いる場合は、いつ、どれくらい働いたかの記録が必須です。

Toggl TrackClockify などのアプリを活用するのも良いでしょう。

事業用スペースの写真

実際に仕事で使っている様子を写真で残しておくと、より客観的な証拠になります。

これらの資料を揃えておけば、自信を持って経費の妥当性を説明できます。

これだけでOK!家賃を経費にする確定申告の3ステップ

ここまでの知識を元に、実際に確定申告で家賃を経費にするための手順を3つのステップで解説します。

このとおりに進めれば、初めての方でも迷うことなく作業を終えられます。

ステップ1:経費計上の証拠となる書類を準備・保管する

まず、経費計上の大前提となる証拠書類を集めて保管します。

税法上、これらの書類は原則として7年間(青色申告の場合)の保存が義務付けられています。

必ず保管すべき書類リスト

  • 賃貸借契約書
  • 家賃を支払ったことが分かるもの
    • 銀行振込の場合:通帳のコピーやインターネットバンキングの取引履歴
    • クレジットカード払いの場合:カードの利用明細
  • 家事按分の計算根拠となった資料
    • 面積按分の場合:事業用スペースを明記した間取り図
    • 時間按分の場合:業務時間を記録した日誌やデータ

これらの書類をファイルにまとめておき、いつでも提示できるようにしておきましょう。

ステップ2:帳簿に仕訳を記入する(勘定科目と仕訳例)

次に、日々の取引を記録する帳簿に、家賃の支払いを記入(仕訳)します。

家賃を経費にする際の勘定科目は「地代家賃」です。

プライベート分と事業分を分けるため、「事業主貸」という勘定科目も使います。

これは、事業用の資金からプライベートの支出を支払った際に使う科目です。

用語意味
地代家賃事務所や店舗の家賃、駐車場の賃借料などを支払う際に使う勘定科目。
事業主貸事業用の資金から、事業とは関係ないプライベートな支払いをした際に使う勘定科目。

【仕訳例】家賃20万円を事業用口座から支払い、按分割合が事業25%、プライベート75%の場合

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
地代家賃50,000円普通預金200,000円10月分家賃
事業主貸150,000円   

会計ソフトを使えば、このような仕訳も簡単な入力で完了します。

ステップ3:確定申告書に記入する

最後に、1年分の経費を集計し、確定申告書に記入します。

会計ソフトを利用していれば、この作業はほぼ自動で完了します。

具体的には、青色申告決算書(白色申告の場合は収支内訳書)の損益計算書にある「地代家賃」の欄に、1年分の経費合計額を記入します。

ステップ2で正しく仕訳ができていれば、ソフトが自動で集計して転記してくれます。

家賃だけではない!家事按分で経費にできる費用一覧

自宅で仕事をしているフリーランスが家事按分できるのは、家賃だけではありません。

生活費の一部も事業で使っていると考え、経費に計上できます。

これにより、さらなる節税効果が期待できます。

水道光熱費(電気・ガス・水道代)

水道光熱費も、家事按分の対象となる代表的な費用です。

それぞれの費用に適した合理的な基準で按分します。

電気代

按分基準:事業での使用時間、事業用コンセントの数など。

仕事でPCや照明を長時間使うため、他の光熱費より事業割合を高く設定しやすい傾向があります。

ガス代

按分基準:料理研究家が調理で使うなど、事業での使用頻度。

一般的なデスクワークでは、事業割合は低めになることが多いです。

水道代

按分基準:美容師や陶芸家など、事業で水を使う場合。

こちらも、一般的なデスクワークでは事業割合は低めです。

通信費(インターネット・スマホ代)

今や仕事に不可欠なインターネット回線やスマートフォンの料金も、もちろん経費になります。

按分基準

業務での使用時間や日数(例:週5日利用なら5/7)。

通話履歴やデータ通信量のうち、事業利用が占める割合。

ポイント

最も明確なのは、事業用とプライベート用で回線や端末を完全に分けることです。

その場合、事業用は100%経費として計上できます。

自動車関連費(駐車場代・ガソリン代など)

取材や打ち合わせ、納品などで車を使う場合、関連する費用も経費にできます。

自宅の駐車場代も家事按分の対象です。

対象となる費用

  • 月極駐車場代
  • ガソリン代
  • 自動車税、自動車保険料
  • 車検費用、修理代

按分基準

  • 業務で走行した距離(走行記録ノートや業務日報で管理)。
  • 業務で使用した日数(例:週3日利用なら3/7)。

【税務調査で否認されないために】家賃を経費にする際の注意点7選

安心して家賃を経費計上するためには、いくつか知っておくべき注意点があります。

初心者が陥りがちな失敗や重要なルールを7つのポイントにまとめました。

① 持ち家の場合は「減価償却費」や「固定資産税」で計上する

持ち家にお住まいのフリーランスは、家賃の支払いがありません。

しかし、その代わりに以下の項目を家事按分して経費にできます。

  • 建物の減価償却費:建物の価値の減少分を、耐用年数に応じて毎年経費にします。
  • 固定資産税:毎年支払う固定資産税のうち、事業で使っている割合分。
  • 住宅ローンの利子:月々の返済額のうち、利子の部分のみが対象です(元本は対象外)。
  • 火災保険料・地震保険料:事業割合に応じて経費にできます。

計算が複雑になるため、持ち家の場合は税理士に相談するのがおすすめです。

② 住宅ローン控除が受けられなくなる可能性に注意

持ち家の場合、最も注意すべき点が住宅ローン控除との関係です。

事業での使用割合が50%を超えると、住宅ローン控除を受けられなくなる可能性が高いです。

経費計上による節税額と、住宅ローン控除の金額を比較検討する必要があります。

どちらが有利になるか、慎重に判断しましょう。

③ 敷金・礼金・更新料の扱いは?経費にできるもの・できないもの

賃貸契約時には、家賃以外にも様々な費用が発生します。

これらは経費になるものとならないものに分かれるため、正しく処理する必要があります。

項目経費計上勘定科目 / 処理方法
敷金×退去時に返還されるため経費ではなく「資産」。【差入保証金】として計上。
礼金支払時に経費にできる。20万円以上の場合は「繰延資産」として数年かけて償却。
仲介手数料【支払手数料】として支払時に経費計上。
更新料【地代家賃】として支払時に経費計上。20万円以上の場合は礼金と同様。

④ 賃貸契約書が自分名義(個人名義)でなくても経費にできる?

パートナーや親族が契約者となっている物件に住んでいる場合でも、諦める必要はありません。

契約者名義が自分自身でなくても、以下の2点を満たせば経費計上は可能です。

  1. あなたが実際にその家賃を負担していること(支払っていること)。
  2. その物件を実際に事業で使用していること。

家賃の支払い事実を証明するために、契約者への送金履歴などを必ず残しておきましょう。

⑤ 生計を同一にする親族への家賃支払いは経費にならない

税法上の重要なルールとして、生計を一つにして暮らしている親や配偶者に家賃を支払っても、それは経費として認められません。

例えば、親が所有する家の一室を借りて仕事をし、親に家賃を支払っても経費にはなりません。

これは多くの人が間違いやすいポイントなので、注意してください。

⑥ 按分割合は一度決めたら継続するのが基本

家事按分の割合は、一度合理的な基準で決めたら、その後も継続して同じ割合を使い続けるのが原則です。

毎年理由なく割合を変動させると、税務署から恣意的な操作を疑われる可能性があります。

引っ越しや事業内容の変更など、合理的な理由がある場合のみ、割合を見直しましょう。

⑦ 青色申告と白色申告で家事按分のルールは違う?

家事按分のルールは、青色申告と白色申告で若干異なります。

結論から言うと、青色申告の方が家事按分において有利です。

申告方法家事按分のルール
白色申告業務の遂行上、直接必要であったことが明らかに区分できる部分のみ経費にできる。
青色申告業務の遂行上必要で、その必要部分を合理的に区分できればOK(より広く認められやすい)。

青色申告は最大65万円の特別控除など、他にも多くのメリットがあります。

フリーランスとして活動するなら、青色申告を選択することを強くおすすめします。

フリーランスの家賃経費に関するQ&A

ここでは、家賃の経費計上に関してよく寄せられる質問にお答えします。

細かい疑問を解消し、スッキリした状態で確定申告に臨みましょう。

Q. 引っ越した場合の家賃経費はどうなりますか?

年の途中で引っ越した場合、少し計算が複雑になります。

旧居と新居、それぞれの家賃を月割りで計算する必要があります。

  1. 旧居の家賃:1月から引っ越し前月までの家賃合計額に、旧居での按分割合を掛ける。
  2. 新居の家賃:引っ越し当月から12月までの家賃合計額に、新居での按分割合を掛ける。
  3. 合計:上記1と2を合算した金額が、その年の「地代家賃」の経費額となります。

按分割合も、それぞれの住居の実態に合わせて設定し直すのを忘れないようにしましょう。

Q. 税務署から問い合わせが来たらどうすればいいですか?

万が一、税務署から経費について問い合わせがあったとしても、慌てる必要はありません。

やましいことがなければ、堂々と対応すれば大丈夫です。

対応のポイント

  • まずは落ち着いて、何について確認したいのかを正確にヒアリングする。
  • 準備しておいた根拠資料(間取り図、契約書、時間記録など)を提示する。
  • 「なぜ、その按分割合にしたのか」を、資料に基づいて論理的かつ誠実に説明する。

もし自分一人での対応に不安を感じる場合は、税理士に相談し、代理で対応してもらうことも可能です。

日頃から根拠をしっかり準備しておくことが、何よりものお守りになります。

まとめ:正しい知識で家賃を経費に計上し、安心して確定申告を乗り切ろう

フリーランスが家賃を経費に計上することは、節税の基本であり、正当な権利です。

大切なのは、そのためのルールを正しく理解し、実践することに尽きます。

この記事で解説したポイントを改めて確認しましょう。

  • 家賃は「家事按分」をすれば経費にできる。
  • 按分方法は「面積」か「時間」が基本。
  • 最も重要なのは「なぜその割合なのか」を説明できる客観的な根拠。
  • 証拠となる書類は必ず7年間保管する。

支出の中で最も大きな割合を占める家賃を適切に経費計上できれば、手元に残るお金は大きく変わります。

この記事で得た知識を武器に、自信を持って確定申告の準備を進めてください。

もし、どうしても経理処理や確定申告が複雑で不安だという場合は、便利な会計ソフトを活用したり、税理士などの専門家に相談したりするのも有効な選択肢です。

自分に合った方法で、この大きな関門を乗り切りましょう。

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