
「フリーランスになったはいいけれど、確定申告って何から始めたらいいの?」
「もし間違えたらどうしよう…」
会社員から独立したばかりの方や、副業で収入を得始めた方の多くが、このような強い不安を抱えています。
税金の話は専門用語が多く、自分一人で正しく手続きできるか心配になるのも当然です。
この記事では、確定申告が初めての方でも全体像を掴み、必要な手続きをミスなく、そして賢く終えられるように、手順やポイントを丁寧に解説します。
この記事を読み終える頃には、確定申告への漠然とした不安は消え、「自分にもできる」という自信に変わるでしょう。
さあ、フリーランスとしての確かな一歩を、ここから踏み出しましょう。
Contents
まずはココから!私って確定申告は必要?【フローチャートで診断】
確定申告について考える最初のステップは、そもそも自分にその義務があるかを知ることです。
専門用語を一旦脇に置いて、あなたの状況に当てはまるかチェックしてみましょう。
フローチャート形式で、ご自身の状況を確認してみてください。
- 主な収入源はフリーランスとしての事業ですか?
- はい → 次の質問へ
- いいえ(会社員やパートが主) → 質問3へ
- 1年間の「所得」は48万円を超えますか?
- ※所得 = 収入 - 必要経費
- はい → 確定申告が必要です
- いいえ → 原則不要ですが、申告した方がメリットを得られる場合もあります
- 会社からの給与以外に、副業での「所得」がありますか?
- はい → 次の質問へ
- いいえ → 会社が年末調整をしてくれるため、原則不要です
- 副業での「所得」は年間20万円を超えますか?
- はい → 確定申告が必要です
- いいえ → 所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です
【本業フリーランス】年間の所得が48万円を超えたら申告が必要
フリーランスとして事業を営んでいる方は、「所得」の金額が確定申告の必要性を判断する基準になります。
ここで大切なのは、「収入」と「所得」の違いを理解することです。
- 収入:クライアントから受け取った報酬の総額(売上)
- 経費:事業を行うためにかかった費用(通信費、交通費など)
- 所得:収入から経費を差し引いた金額(利益)
この計算式で算出した「所得」が年間48万円を超える場合、確定申告の義務が発生します。
48万円という金額は、すべての人に適用される基礎控除です。
用語 | 意味 |
---|---|
収入 | 事業活動によって得た売上の合計金額 |
経費 | 収入を得るために直接必要となった費用の合計金額 |
所得 | 収入から経費を差し引いた、個人の儲けにあたる金額 |
基礎控除 | 全ての納税者に適用される、所得から差し引ける一定の金額(48万円) |
【副業・主婦パート】給与以外の所得が20万円を超えたら要注意
会社員やパートとして給与をもらっている方が副業をする場合、基準は異なります。
この場合、給与以外の所得(フリーランスとしての所得など)が年間で20万円を超えるかどうかで判断します。
例えば、副業のWebデザインで年間30万円の収入があり、経費が5万円だった場合、所得は25万円です。
この所得25万円は20万円を超えるため、確定申告が必要になります。
ただし、この「20万円ルール」は所得税の話です。
住民税の申告は、所得が20万円以下でも必要になるので注意しましょう。
知らないと大損!確定申告しないとどうなる?知っておきたいペナルティ
「もし確定申告をしなかったらどうなるの?」と疑問に思うかもしれません。
確定申告は国民の義務であり、怠ると厳しいペナルティが課せられます。
面倒だからと後回しにすると、本来払うべき税金よりもずっと多くの金額を支払うことになりかねません。
どのようなペナルティがあるのか、正しく理解しておきましょう。
ペナルティの種類 | 内容 | 税率の目安 |
---|---|---|
無申告加算税 | 期限内に確定申告をしなかったことに対する罰金 | 納付税額50万円まで:15%、50万円超:20% |
延滞税 | 法定納期限までに税金を納付しなかったことに対する利息 | 納期限の翌日から2ヶ月以内:年約2.4%、それ以降:年約8.7%(変動あり) |
重加算税 | 意図的に所得を隠すなど、悪質なケースに課される最も重い罰金 | 無申告加算税に代えて、納付税額の40% |
これらのペナルティは、将来的な金銭リスクを避けるために必ず知っておくべき知識です。
面倒だけじゃない!フリーランスが確定申告をする3つの大きなメリット
確定申告は、単なる義務や面倒な手続きではありません。
正しく行うことで、フリーランスとしての活動を有利に進める、大きなメリットがあります。
1.払いすぎた税金が戻ってくる(還付)
クライアントからの報酬が源泉徴収(げんせんちょうしゅう)されている場合、税金を前払いしている状態です。
確定申告で正しい税額を計算し直すことで、払いすぎていた分が還付金として戻ってくる可能性があります。
2.社会的信用度が上がり、各種契約に有利になる
確定申告書の控えは、自分の収入を公的に証明する重要な書類です。
住宅ローンや自動車ローンを組む際、賃貸物件を契約する際、保育園の入園申請をする際などに提出を求められます。
社会的信用を得て、ライフプランを円滑に進めるために不可欠です。
3.各種控除を使って賢く節税できる
確定申告では、経費を計上するだけでなく、様々な所得控除を利用できます。
後述する青色申告の特典や、iDeCo、生命保険料控除などを活用することで、課税対象となる所得を減らし、納める税金を合法的に抑えることが可能です。
【完全版】フリーランスの確定申告|年間スケジュールとやるべき準備
確定申告をスムーズに終える秘訣は、直前になって慌てるのではなく、年間を通じて計画的に準備を進めることです。
「いつ、何をすれば良いのか」という全体像を把握し、着実に取り組みましょう。
Step1:申告期間はいつからいつまで?提出期限を再確認
確定申告には、定められた期間があります。
この期間を逃さないよう、カレンダーに登録しておくことをお勧めします。
- 申告期間:原則として、毎年2月16日から3月15日まで
- 納税期限:原則として、申告期間と同じ3月15日まで
提出期限が土日や祝日と重なる場合は、翌平日が期限となります。
Step2:確定申告に必要な書類をチェックリストで確認
確定申告書を作成する前に、必要な書類を集めておく必要があります。
漏れがないように、以下のチェックリストで確認しましょう。
カテゴリー | 書類名 | 備考 |
---|---|---|
全員必須 | 確定申告書 | 国税庁のサイトや税務署で入手 |
本人確認書類 | マイナンバーカード、または通知カード+運転免許証など | |
銀行口座情報 | 還付金を受け取る場合に必要 | |
収入関連 | 支払調書、源泉徴収票 | クライアントから発行される。なくても申告は可能 |
経費関連 | 領収書、レシート、請求書 | 事業にかかった費用の証明 |
控除関連 | 各種控除証明書 | (例)国民年金、国民健康保険、生命保険、iDeCoなど |
医療費控除の明細書 | 年間の医療費が10万円を超える場合など |
Step3:「青色申告」「白色申告」どっちを選ぶ?メリット・デメリット比較
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
どちらを選ぶかによって、節税効果や手続きの手間が大きく変わります。
比較項目 | 青色申告 | 白色申告 |
---|---|---|
節税効果 | 非常に高い(最大65万円の特別控除など) | 低い(特典なし) |
手続きの手間 | 複雑(複式簿記での記帳が必要) | 簡単(簡易簿記でOK) |
事前申請 | 必要(原則3月15日まで) | 不要 |
初心者の方は簡単な白色申告を選びがちですが、会計ソフトを使えば青色申告の手間は大幅に削減できます。
節税メリットが非常に大きいため、フリーランスとして活動するなら青色申告がおすすめです。
Step4:【青色申告者向け】開業届・青色申告承認申請書の提出
青色申告のメリットを享受するためには、事前に税務署へ2つの書類を提出する必要があります。
1.個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
事業を開始したことを税務署に知らせる書類です。
事業開始から1ヶ月以内に提出します。
2.所得税の青色申告承認申請書
青色申告をしたい旨を申請する書類です。
原則として、青色申告をしたい年の3月15日までに提出します。
これらの書類は、管轄の税務署窓口、郵送、またはe-Taxで提出できます。
Step5:日々の取引を記録する(帳簿付けの基本)
確定申告の基礎となるのが、日々の売上や経費を記録する「帳簿付け」です。
いつ、誰から、いくら入金があったのか。
いつ、何に、いくら支払ったのか。
これらの取引を一つひとつ記録していく作業が、正確な所得計算に繋がります。
手作業での管理は大変ですが、後述する会計ソフトを導入すれば、この作業を半自動化することが可能です。
【5ステップで完了】初心者でもわかる確定申告書の作成から提出までの流れ
準備が整ったら、いよいよ確定申告書を作成していきます。
難しそうに感じるかもしれませんが、一つひとつのステップを順番に進めれば大丈夫です。
このセクションでは、全体の流れを5つのステップに分けて解説します。
① 収入と経費を集計して「所得」を計算する
まずは、1月1日から12月31日までの1年間の取引記録をもとに、総収入と総経費をそれぞれ集計します。
そして、以下の計算式で「所得」を算出します。
所得金額 = 1年間の総収入 - 1年間の総経費
この所得金額が、税金計算のスタート地点となります。
② 控除を計算して「課税所得」を出す
次に、先ほど算出した所得金額から、利用できる各種「所得控除」を差し引きます。
所得控除には、全員が使える基礎控除(48万円)のほか、社会保険料控除、生命保険料控除などがあります。
課税所得 = 所得金額 - 各種所得控除の合計額
この計算で算出された「課税所得」が、実際に税率を掛ける対象の金額になります。
控除額が大きいほど、課税所得は小さくなり、結果的に税金が安くなります。
③ 確定申告書を作成する3つの方法(手書き・国税庁サイト・会計ソフト)
課税所得まで計算できたら、確定申告書に数字を記入していきます。
作成方法には、主に3つの選択肢があります。
作成方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
手書き | 費用がかからない | 計算ミスが起きやすい、時間がかかる |
国税庁サイト | 無料で利用できる、自動計算してくれる | 簿記の知識がないと入力が難しい部分がある |
会計ソフト | 簿記知識がなくても簡単、ミスが少ない | 年間費用がかかる |
初心者の方には、ガイドに従って入力するだけで書類が完成し、計算ミスも防げる会計ソフトの利用を強くおすすめします。
④ 確定申告書を提出する(e-Taxがおすすめ)
完成した確定申告書は、以下のいずれかの方法で税務署に提出します。
- e-Taxで電子申告する:自宅からオンラインで完結。
- 郵送する:管轄の税務署へ送付。
- 税務署の窓口へ持参する:直接提出し、受領印をもらう。
特におすすめなのがe-Taxです。
青色申告で最大65万円の控除を受けるためには、e-Taxによる申告または電子帳簿保存が必要です。
時間や場所を選ばずに提出できるため、非常に便利です。
⑤ 税金を納付する、または還付金を受け取る
申告書を提出したら、最後の手続きです。
納税が必要な場合
計算の結果、納めるべき税金がある場合は、期限(原則3月15日)までに納付します。
振替納税、クレジットカード納付、コンビニ納付など、様々な方法があります。
還付金がある場合
税金を払いすぎていた場合は、申告書に記入した銀行口座へ還付金が振り込まれます。
e-Taxで申告すると、通常3週間程度で入金されます。
手取りを増やすための5つの鉄則
確定申告は、単に税金を納めるための手続きではありません。
制度を正しく理解し活用することで、手元に残るお金を増やす「節税」が可能です。
ここでは、フリーランスがすぐに実践できる5つの鉄則を紹介します。
鉄則1:経費にできるもの・できないものを見極める【具体例一覧】
節税の最も基本的な方法は、事業にかかった費用を漏れなく経費として計上することです。
どこまでが経費として認められるのか、具体例で確認してみましょう。
経費の種類 | 具体例 | ポイント |
---|---|---|
消耗品費 | ペン、ノート、プリンターインク | 事業で使う文房具や事務用品 |
通信費 | インターネット料金、携帯電話料金 | 事業で使用する割合分を家事按分(かじあんぶん)して計上 |
地代家賃 | 自宅兼事務所の家賃、光熱費 | 事業で使用する面積や時間で家事按分して計上 |
旅費交通費 | 電車代、バス代、打ち合わせ先へのタクシー代 | 事業に関連する移動にかかった費用 |
新聞図書費 | 資料として購入した書籍、専門雑誌 | 情報収集やスキルアップのための費用 |
接待交際費 | 取引先との飲食代、お中元・お歳暮 | 事業関係者との関係を円滑にするための費用 |
プライベートな支出は経費になりませんが、事業に関わるものは忘れずに計上しましょう。
鉄則2:青色申告(65万円控除)を最大限活用する
何度か触れてきましたが、青色申告はフリーランスにとって最大の節税策です。
最大65万円の青色申告特別控除が受けられるので、課税所得を大幅に圧縮できます。
例えば、課税所得が300万円の人の場合、所得税率が10%だとすると、
65万円 × 10% = 6万5000円
これだけで約6万5000円も税金が安くなる計算です。
このメリットを逃す手はありません。
鉄則3:iDeCo・小規模企業共済で所得控除を増やす
フリーランスは会社員と違い、退職金がありません。
将来への備えと節税を同時に実現できるのが、以下の制度です。
制度名 | 概要 | 節税メリット |
---|---|---|
iDeCo | 個人型確定拠出年金。自分で掛金を運用し、将来年金として受け取る。 | 掛金が全額所得控除の対象になる。 |
小規模企業共済 | フリーランスや個人事業主のための退職金制度。 | 掛金が全額所得控除の対象になる。 |
これらの掛金は、所得から全額差し引くことができます。
将来の自分への投資が、現在の節税にも繋がる非常に有利な制度です。
鉄則4:使える所得控除(医療費・生命保険料など)を漏れなく申請
青色申告特別控除やiDeCo以外にも、使える所得控除はたくさんあります。
見落としがちな控除を漏れなく申請することで、さらに節税効果を高められます。
- 国民年金保険料、国民健康保険料(社会保険料控除)
- 生命保険、介護医療保険、個人年金保険(生命保険料控除)
- 1年間の医療費が10万円を超えた場合など(医療費控除)
- ふるさと納税(寄附金控除)
該当するものがないか、支払いの証明書などを今一度確認してみましょう。
鉄則5:【主婦向け】扶養の範囲(103万・130万の壁)を意識する
配偶者の扶養に入りながらフリーランスとして働く方は、「壁」を意識することが重要です。
壁には2種類あり、それぞれ意味が異なります。
壁の種類 | 超えた場合の影響 | ポイント |
---|---|---|
103万円の壁(税法上の扶養) | 配偶者の所得税が増える(配偶者控除が外れる) | フリーランスの場合、所得48万円が目安(給与収入なら103万円) |
130万円の壁(社会保険上の扶養) | 自分で国民健康保険と国民年金に加入する必要があり、負担が大幅に増える | こちらは収入が基準。経費は引けない |
自分の働き方や収入目標に合わせて、扶養の範囲内で活動するか、扶養を外れて大きく稼ぐかを戦略的に考える必要があります。
確定申告の不安や手間を解消するサービス
ここまで解説してきたように、確定申告には多くのステップと専門知識が求められます。
「やはり自分一人では難しそう」「本業が忙しくて時間が取れない」と感じる方もいるでしょう。
そんな時は、専門のサービスを頼るのも賢い選択です。
サービス | メリット | デメリット・費用 | こんな人におすすめ |
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税理士に依頼 | すべて任せられる、最も正確で安心、節税相談もできる | 費用が高い(年間10万円~) | 面倒な作業から解放されたい人、本業に集中したい人 |
まとめ:初めての確定申告を乗り越え、フリーランスとして自信を持とう
この記事では、フリーランスの確定申告について、その必要性の判断から具体的な手順、そして賢い節税術までを網羅的に解説しました。
確定申告は、フリーランスとして自立し、事業を運営していく上で避けては通れない大切なプロセスです。
初めての挑戦は誰でも不安なものですが、一つひとつのステップを確実に踏んでいけば、必ず乗り越えることができます。
この手続きを自分自身の手でやり遂げた経験は、あなたに大きな自信を与えてくれるはずです。
それは、自身の事業を数字で把握し、責任を持つ経営者としての第一歩に他なりません。
この記事が、あなたのその一歩を力強く後押しできれば幸いです。